カネミ油症は終わらない

私が楽しみにしているテレビ番組にNHKのアーカイブスというのがある。

過去のドキュメンタリーの中からピックアップしたものを放送しているのだ。

今回のテーマは「環境アーカイブス」として、カドミウム汚染によって発症したイタイイタイ病を取り上げていた。

数多くの公害病の中でも歴史は深く、さらに政府と財閥というどうしようもない関係も絡んでいる。また風評によってもたらされた地域への深刻な被害は今でも続いている。風評を恐れるがために企業をかばう形になった人たち。それを利用した企業。。。

とてもブログで書いていいのかどうか迷うほどの迫力で現代の私に訴えかけてくる。

>>NHKアーカイブス公式サイト

公害について検索してみると、一昨年の記事で西日本新聞社の記録「ワードボックス」に目がいった。

>>カネミ油症事件 by 西日本新聞社ワードボックス

誰もが知っているその事件は「カネミ油症」だ。

北九州の会社が米ぬか油を製造した時にPCBによって作られる猛毒を混入させてしまい、それを食した人々が多大な被害を負ったあの事件である。私が生まれた昭和43年の事件ということもあり特別その名前は覚えていた。

では、なぜその西日本新聞社さんの記事に目がいったのかと言うと、実は現代もそのカネミ油症によって苦しんでいる人たちが増えているということだった。

【カネミ油症事件の被害者百四十七人が今年四月、日本弁護士連合会の人権擁護委員会に人権救済を申し立てた。】2004.06.17掲載文より引用

長崎県に住む71歳の男性は、36年前カネミ油を使った料理を食べ多臓器不全を発症。家族6人全員が発症した。そして母乳によって感染した娘さんは黒い赤ちゃんとなり、その娘さんが生んだお子さん(ご本人から言うとお孫さん)も黒い赤ちゃんだったのだ。カネミ油症で発症した女性の実に49%が生殖機能に障害が発生したそうです。たった1回の、それもたまたま出かけた先で食べた食事のせいで、子孫まで苦しめられるとは誰が想像できようか。

ただ今回の人権救済を申立てはその事ではない。

当時の裁判では、国の責任を認めて、仮払い金として国から支払われたお金があった。当然だろう。ところが上告審で最高裁が「国に責任なし」との判断を示唆したため裁判は取り下げ、逆に返還義務がすべての人たちに発生してしまった。その債権取立てが今の時代も続いているのだそうだ。ほとんどの人たちが裁判費用や治療費に使ってしまっていたので、返還されたのはごく一部。ほとんどの人たちは返済するのもままならない状態だ。

普通ならこのまま国は放棄すると思うが請求の時効(十年)を前に国は返還を拒んだ被害者に対して裁判を起こした。つまり時効が延長されたのである。

しかもこの返還義務は、通常の借金と同様に本人が死亡した場合は子孫が相続することになるのである。

ここで「今回の人権救済を申立て」となったんだそうだ。

国が放棄する条件は二つある。

債権管理法では、特別立法制定か10年間支払いができないと判断された場合のみとなっている。先述の通り、国に後者の方法は通用しない。

カネミ油症事件 by 西日本新聞社ワードボックス」を書かれた記者の方は、こうしめくくる。

「解決には政治の支援と世論の後押しが必要だ」と。

私にはなにができるのだろうか。そう考えた時。

自分のブログに書くことによって、より少しでも多くの人が今も苦しんでいる人たちがいることをほんの少しでも知ってもらえれば・・・なんて都合のいいことは考えるべきじゃないのかな。

少なくとも、自分自信の記憶の中に刻めただけでもよしとするか。決して忘れることはないだろう。

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